「稽古場のお友達」として見守っていただいている土橋銘菓さんを聞き手に、「ネオンの薬は喋らない」出演者たちにお話を伺いました。
人間嫌い常連のキャストから、はじめましての方も交えて、今作と役への想いをどうぞお楽しみください。
土橋:稽古場のお友達、土橋銘菓です。座談会第2弾、始めたいと思います。 じゃあ、ベタだけど、自己紹介と自分の演じる役どころ、お願いしまーす。
川勾:川勾みちです。私の演じる役は、柳というお花屋さんの役で。物語の舞台が深夜にやっている薬局なんですけど、その薬局のはす向かいにあるお花屋さんです。よく薬局にお花を届けがてら、ちょっとお喋りをしに来る、情報通かつコミュ障かつ仲良しになりたい、頑張る、みたいな感じです。
河村:河村慎也です。前澤昌幸という薬剤師の役をやらせていただきます。あの、座組唯一の男性なんです。ひょんな事から薬局に勤めることになった人で、なんか色んな人の色んな話を聞きまくるポジションです。
樋口:樋口双葉です。モカっていう役をやります。「ゴリラ前」っていう場所にたむろしてる若者の1人で、セーラー服着て、ルーズソックス履きます。楽しみです。楽しみです。
##川勾さんが演じるのは、歓楽街のお花屋さん
土橋:なんか私は、みっちゃんがコミュ障の役やるの、凄い好きなんだよ。
※みっちゃん=川勾みち
川勾:私も好き。
土橋:なんかね、肌なじみがいいです。
川勾:分かる。下地の意味合いで、肌なじみがいいよね。
土橋:なんかさ、やっぱ役者を活かせる作家がいい作家だと思うのよ。だから美菜子は、いい仕事したなと。近い部分が多い?
川勾:うーん、近い部分が多く、今は作っているかな。私の台詞の中で、今日ちょっとだけ単語が変わった台詞なんだけど、「友達だと、あなたのことを友達だと思っています。」という台詞があるんですけど、私わりと普段も「あなたのことを友達だと思っています」って言うから。岩井にも「私、岩井の友達だと思ってます」みたいなことを言うので、それかなあと思って。私が言葉を書いてくれたのか、それともなにかそれに合うように書いたものが、私にすごく近かったのかなと思う。まあ、どっちかはわかんないけど、はわわって思って。言う言う、って……
土橋:不器用な職人ってめっちゃ良くない?不器用な職人キャラが花屋「柳」の魅力ではあると思って。普通言わねぇじゃんという事を面と向かって言葉で言う。だから、かわいいよね。
川勾:あれはね、いいシーン。
土橋:あんな風に、素直に言っちゃうのもありなんだって思って、いいなって思って。
川勾:まず、情報通とか街に興味がある、みたいなところがめちゃめちゃ自分とは離れているから、今はそこの面で今苦労していることが多いかな。
土橋:似てる面も似てない面もあったね。
川勾:そう。
##樋口双葉さんが演じるのは「ゴリラ前」にたむろする寄る辺の無い若者のひとり
川勾:双葉さんは近い部分はあります? 私は割と双葉さんのモカちゃんマジで、マジでいい。岩井最高みたいな気持ちで今回見てる。
樋口:そうかな
川勾:その、肌なじみがいいって言うと変だけど、なんか、双葉さんがあの役をやって、なんか存在したり喋ってたりするのもめちゃめちゃ、なんか、情緒を揺さぶられて、めちゃめちゃいいなっていう気持ち。
樋口:良かった。なんか、肌なじみって意味ではギャルはなじまない、ギャルはなじまないんですけど。うん、楽しいです。
土橋:私はあまり双葉ちゃん本人を知らないからこそ、普通にそういう人連れてきたんだなって思った。あるじゃんなんか、そういう人をその役として連れてきて、あんまり芝居させないで芝居で使うみたいな。
樋口:でもギャル、ギャルみが足りないとは思ってます。
土橋:これからギャルみが上がるかも知れない。
樋口:みっちゃんと一緒で、岩井さんが私に寄せて書いてくれる感じはしていて。でもだからこそ、自分のやりやすい所で結構やっちゃってるの、嫌だなと思ってるんすけど。なんか役と私が一緒のところで、一番好きなところは、「家が汚い」っていうところが、なんか「家が汚い」って言えるのがすごい嬉しいです。真っすぐに言える。
土橋:そうなんだ。
樋口:セリフで昇華できるのが、とても嬉しい。
土橋:滅茶苦茶さ、鞄の中ゴソゴソしてる、時間あるじゃん。あれさ、めっちゃレシートとかなんだろうなって思ってさ。
樋口:わかります、それは。
土橋:そっち側なのよね、昇華ポイントが。
##とあるきっかけで深夜薬局で働くことになった前澤役、河村慎也さん
河村:前澤は、コミュニケーション能力はめっちゃ低いので。あ、『まーくん』っていうんすけど前澤さんは。別に僕自身もコミュ力高いわけじゃないけど、あそこまで低かったことはないから。そこは僕自身とは違ってて。なんだろうな、……『ディスコミュニケーションの良さ』のある本だと思って……
川勾:あー、確かに
河村:そこが、自分としては苦戦しつつも、何とか面白い部分だと思うので、いっぱい出したいなと思って頑張ってます。
土橋:「傘無くすのなんて晴れてる時だけだと思ってましたよ」みたいなセリフ、良いよね
河村:ね、うん。
土橋:劇中で前沢役は理由話さないでさ、「まぁ」で終わらせること多いじゃん
河村:はい。
土橋:別にそれってさ、コミュニケーションがうまいわけじゃないけど、うまかないとは思うんだけど、それすごく『まーくん』テクね本当に、って思って。めっちゃいい本書いたね。なんか旨味を出してるのは慎也さんだから、めっちゃいいなって思った。
河村:普段ね、知らないこともペラペラ喋るタイプなので(笑)。逆ですね。そういう意味では。
土橋:すげーいい人だと思うんだよ。
川勾:ね、いいよね。
土橋:いい奴だよね。
川勾:優しさはにじみ出る。
##架空の歓楽街「景福町」。そこで生きる人々を演じる
河村:トー横キッズみたいな、「ゴリラ前」っていうちょっと良くないような雰囲気もあって、お水の方もいる。現実の歌舞伎町もそんな感じでいろんな多面性のある街でしょ? どこか一点と関わりはあっても、ほかの点のことは全く知らなかったり。そういうところも、すごくちゃんと脚本に現れてて面白いなって思ってる。
川勾:私はわりと夜の歌舞伎町が、怖い、みたいな人なんだけど。うわ、嫌だ、関わらないようにと思っているから、おそるおそる遠巻きに見たときに感じた人の雑然さとか、街の汚さとか、あの独特の明るさうるささ、を思いだしたり、思い浮かべたりしながら演じてる
土橋:なるほどね
川勾:逆に「街が好き」みたいなシーンのときは、わたし横浜に元々住んでいたから、横浜とか方面を思い出してちょっとポジティブな気持ちになったりして、やってたりする。
河村:……何か、ハードだなと思います、僕は。
土橋:どういう事?
河村:なんていうか「深度」で勝負するところがすごく多い本と役なので。今日の稽古でも表面上の面白さとか、ソフトタッチなところの面白さとか、そういうところじゃないところで勝負しようとしてる。
土橋:ほう
河村:何かしっかりと、ちゃんと準備をして、褌締め直して稽古に行かないといけないって毎日なってます。そういう意味でハード。僕の場合、全70数ページある中で、舞台上にいないの1ページしかないので。
土橋:あー
河村:単純に量を含めてハード。とても良い役なので嬉しい限りですけどね。
川勾:うんうんうん。
河村:脳が疲れるの感じますね、体が疲れるというか。
土橋:うん。
樋口:わたしは、やっぱり「ギャル」……
土橋:ギャルの定義ってなんだと思う?
樋口:ギャルの定義……すごい個人的な、作品と関係ないんですけど。他人をアゲてくれる人はギャルだと思ってて。
川勾:あー、そうなんだ。最高じゃん。
樋口:最近思ったのは、演劇のチケットの予約するときに、備考欄にメッセージを書いてくれる人は、ギャルと思って……
一同: (笑)
川勾:初めて聞いたんだけどその解釈。
土橋:え、でもめっちゃわかる。
川勾:なるほどな……
河村:予約の備考欄に、双葉ちゃんは何か書くの?
樋口:書かないです。
河村:ギャルじゃないんだ。
川勾:私たまに書くよ。
河村:ギャル
川勾:楽しみにしてます、みたいな事を。
樋口:嬉しい。嬉しいじゃないですか。
川勾:わたしはギャルだったってこと?
土橋:あの、私大好きとか書かれて。お前、友達だろ? 嬉しい、って思うよね。
川勾:あれ、本当に確かにテンション上がるよね。
河村:この人から予約してしまったことへの言い訳とかをするのは……
樋口:あー、それはギャル、かなー?
河村:何とかさんは次の公演に出るの、知ってるので、その時にそっちから予約するので
川勾:LINEでしてくれー
土橋:ノットギャルだね。
河村:ノットギャル。
川勾:河村さんギャルじゃなかったな。
##モカちゃんは『ハイコンテクストギャル』
土橋:モカちゃんと関わる人間は、みんな楽しいんじゃない?
樋口:そういう存在になっていかなきゃいけない、ということですね、演じるうえで
土橋:コミュニティの中でトップかどうか、じゃなくて、逆張りをする、したい気持ちがあるんじゃないかな
樋口:あー
土橋:だからそのやり口として「ギャル」があるし、この心の構えはオタクでもあると思うんだよ、迎合しないで自分を持ちたい、みたいな。
河村:そこに痛みも忘れない人でもあるんじゃない、多分。この人たちがもしかしたら忘れてしまっているような
土橋:ハイコンテクストギャルだよね
河村:カウンターカルチャー、カウンターすることへの痛みというか。
樋口:学校に行かないとか、そういうことですか?違う?
土橋:それもそうだと思う。だし、不景気だから明るい未来に就職希望だわってつんくが言った、あの、アレ。
川勾:うんうんうん。
樋口:うわ、それわかりみかも。
河村:その、逆走している状態に対しての痛みを自覚したくないから、カウンターしていくってことなのかな。なるほどな―! ああそうか。思ってたんとちょっと違ったわ。
土橋:それが自分らしさなんじゃない、逆張りが逆張りしていく事によって、自らを守っていく。
##人間嫌いの稽古場って一番きついかもしれない
川勾:人間嫌いの本がなのか、岩井の演出がなのか、どっちもなのかもだけど、暗いシーンほど明るくやるけど、内面はギャン暗いとか。明るいシーンは、何かべらぼうに明るくしていい訳じゃないし。あとは、何かお芝居的なコメディの面白さをここはパンと出してほしいみたいなことが結構ある。
土橋:うん、あるある
川勾:もう本当に何回出演しても、毎回こうなってるから良くないんだけど、私は割と稽古のどっかのタイミングで「分かった、こうだ!できた!」ってやるから、早く早くできるようになりてぇ。まだだ、全然、全然まだや、みたいな。
土橋:人間嫌いの稽古場って一番きついかもしんない。
川勾:本当に。緊張する。
土橋:「大きい声出して」とか、「いっぱい運動して」とかじゃなくて。一緒に探していく感じ。例えば状況のゴールは美菜子の中では決まってるんだけど、でもそれがどうやったら客に見えるのかは美菜子もわかってないとかも、割とあるじゃない。だから、全部正しい手順を踏んでいるが故に、すごいなんかしんどい手作り演劇って感じ。何て言うんだろう。なんかね文学的だなと私は思うよ。人間嫌いの台本って日本語読んだままで一応会話は成立してる、んですよ。でもそこが真意じゃないから難しい。
川勾:そうそうそう、分かる。
土橋:本当の真意にたどり着くには、すっげー、そのなんか……
川勾:分かる。文字面読んで言うだけでは……
土橋:国語の授業的には……
川勾:意味合いがとれない。
土橋:し、それをアウトプットする役者の力量ってのはマジで計り知れないから。人間嫌いの台本を成立させるのって、本当に難しいと思うから役者の皆さん頑張ってください。体感したことでもあるし、うん。またやってるなと思って、すげー難しいこと要求してるよって思った。
##岩井美菜子が感じている生きづらさそのまんま出てる
河村:自分ではあっけらかんといつも生きているので、この脚本中の会話ほどレイヤーがないんですよ自分に。岩井美菜子が書いてくる脚本の真意はレイヤーが5枚ぐらいだから
川勾:そっか。レイヤーが足んねえんだ。だからか。その3枚目のレイヤーでやるから、いやもっと違くない?
河村:そうそうそう。
土橋:6枚目位
河村:もう2枚ぐらい足してくださいっていうのが……
川勾:今まだ上辺かってなる。
河村:普段1枚、1枚もない0.5枚ぐらいで生きているので……
土橋:えー、そう。私もそんなもんだよ。どちらかというと。
河村:お腹空いた。飯食う、じゃないんだよ。人間嫌いはって思う。
土橋:ああ、すっげー、わかる。
川勾:確かに。
土橋:目の前の人が飯食ってるけど、お腹すいてるから食べてるわけじゃなくて。本当は食べたくないけど食べてて、でもその本当の理由っていうのは食べたいからであるみたいな。
川勾:するするする
河村:ココなんじゃないかなって、岩井美菜子の感じている生きづらさみたいなのがちゃんと表れてるのが
土橋:それを普通に一番表面で見えてるところで私自身、受けとるときもあるし、あの勝手な深読みで6枚目くらいを自分と重ねて「あー、めっちゃ分かる」ってなることもある。なんか急に、号泣する時もあるし。だからそこに意図的なコントロールがあるときと、コントロールしないでお好きなところで読んでください、っていうところところがあると思って、人間嫌いの良さだよなって
河村:しかもそれをポップにやりたいですって言うからね。
川勾:そうそうそう。
土橋:なんかめっちゃ難しい繊細な芝居してると思うんだけどさ、と思ったらふざけるじゃん。
河村:うんうんうん。
土橋:私あれ大好きなんだよね。
川勾:ふざけ散らかした方が。
土橋:ふざけてないっていうか、ふざけてはないんだけどさ。でも人間ふざけるじゃん。
川勾:うんうんうん。わかるよ。
土橋:全部詰まったときにこそそういうのちゃんと入れてくる。それが複雑な人間だなって。
河村:岩井美菜子、愉快なところもある人なんですよ。
川勾:そうそう
河村:それはそれで表れている。
土橋:確かに。
川勾:岩井がプライベートでふざけようと思ってふざけているときと、1人のリップサービスでふざけているときがあって、それがどっちも脚本に現れていると思う。あと、ここはお芝居的に何かふざけておいてほしいところ、の三つがあって。「おー、今回はどれですかね」みたいな。そう、だからふざけてって言われたら「あ、ここふざけるんだね」みたいなところも多分にある。
河村:今回はどれですかね、聞いてみようかな、稽古場で。
##美菜子作品の「呪い」感
土橋:なんか呪いって言葉は便利すぎてさ、軽薄になるから使いたくないんだけど。でもライトにまとめちゃうと、美菜子の作品って絶対誰かの何かの呪いを解いてくれるんだよね。呪いって言葉で説明した気にはなりたくないんだけど
川勾:私は「ネオンの薬~」ディスコミュニケーションの話だなと思う。ディスコミュニケーションのままコミュニケーションを諦めない話だよなって思っている。私のコミュ症の役っていうのもそうだし、ぶっちゃけこの世の人間みんあ「あんまりコミュニケーションが得意な奴なんかいないよ」って思ってて。私はこのディスコミュニケーションでコミュニケーションを頑張るという点、プラス「世紀末感」をきちんと担わないといけないな、ということを今現在思ったりしました。
土橋:希望だよね。できないままでも、いいから、辞めないで続けなさい、みたいな。
川勾:そうそう。頑張るしかない。ですよね、上手くなるわけでもないし。
土橋:頑張って上手くなったら一番いいけどね。
樋口:ね。
川勾:でもなんか、それでもいいんだよって、みんなそうだって、なんか。それでもコミュニケーションを取ることをあきらめないでいたい、って。観る人にも伝わったらいいな
稽古も佳境に入る中、みなさま座談会ありがとうございました!
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